数多くのビデオを見た結果、やはりそうだった。
一流選手たちは、トレーナーが初心者にシフト・ウェイトを教えるように、ヨッコラショと右足から左足に体重を移動し、そこから右足に体重を移動しなおしぎこちなく左フックを打ってはいない。
非常に小さく速い動きでシフト・ウェイトし、パンチに体重を乗せている。そのシフト・ウェイトは自然な動きになっていて、一流選手は体重の移動だけでなくタイミング合わせを加えてパンチを効かせている。
人間の下半身には3つのバネがある。
(1) 足首のバネ
(2) ヒザのバネ
(3) 腰の突き出しのバネ
この中で、足首のバネだけで打つ直前、瞬間的に体重を移動しているようだ(シューズの中は見られないが、そう推察する)。トレーナー諸氏はみんなヒザのバネばかり強調するが、今後、この足首のバネとシフト・ウェイトの関係を研究すれば、より速く、より強いパンチが打てる。連打(コンビネーションブローにも応用できる)。
近代のパンチのある選手はこのシフトウェイトを多分インナーマッスルで行い、体幹の筋肉で打っているから、小さく見える動きでも強く打てるのだろう。その好例は、全盛期(ライト級時代)のロベルト・デュランだ。
(5−13−05)
今日は本当の休みだ。予定はない。
いま気にかかっている問題のチェックのため、徹底的にビデオを見る。
見るポイントは:
(1) 強いパンチをコンビネーションで打ち込む直前、どんな「体重の移動(シフト・ウェイト)」をしているか。
(2) あるいは、コンビネーションを打つ中で、いかにシフト・ウィエトを効かしているか。
(3) 強いパンチを打ち終わった直後、いかにして体を折りたたんでいるか。
現代の選手は速いばかりであまり参考にならない。80年代、90年代の方がいい打ち方をする選手がいた。
デュラン、ハーンズ、ハグラー、レナード、ゴメス、サラテ、セルバンテス、クエバス、ラモス(シュガー)、サルディバル、オルティス、・・・。
上の(1)から(3)の問題を考え出したのは、最近ジョフレの試合を見直して、その倒し方に感心したからだ(私はのぞき見ガードが好きでなく、従来、ジョフレはあまり好きではなかった。しかし、ジョフレのシフト・ウェイトの上手さに感心し、ジョフレを再評価した)。
見るポイントは限定しているから、早送りで次から次へ出来るだけ多くのハードパンチャーのシフト・ウェイトばかりを集中して見る積りだ。
(5−5−05)
私が「虹の戦記 中村信一・伝」の本の中で一番好きなのは次の文章だ。
「実は、小林弘が身につけつつあるパンチの打ち方を完成品にしておきたかった。中南米ボクシングの神髄は、一にディフェンス、二に体のバネを使ったパンチにある、と信一は考えていた。ディフェンスについては、打たせないで打つ研究を続けてきた信一にとっては手馴れた問題で、左回りで相手の左を殺すこと、ヘッドスリップ、アームブロックなどの動作を、自分の考えてきたことが間違いでなかった確認の意味で見ていた。ロープ際の、打たせない体の動きを、新しい課題としてマスターしていくつもりだった。
目を洗われる思いだったのは、パンチの打ち方だった。日本流の打ち方は、ピストン堀口が一時代を画する活躍をしたとき以降、連打主義になっていた。ただ手数を多く出していく。一発一発のパンチには体の回転がともなわず、手打ちになっていた。
中南米の選手たちがディフェンスを主体とした動きの中から狙っているのは、体のバネを百%生かしたパンチのシャープさ、切れ味だった。腰と肩の回転によって放たれるブローは、単なる手打ちとは比較にならない威力を備えていた」
要は打つ直前、いかに体の力を抜き、パンチを打つとき体のバネを使うかだ。体全体が連動しなければ、いいパンチを打てない。
ここでガードとの兼ね合いの問題が出てくる。ボクシングを最初に教えられたとき、固い(肩に力の入った)ガードの構え方の癖がつくと、この体全体の連動が効かない。いいパンチが打てない。
私がもしジムのオーナーなら、最初ガードを教えワンツーを教えたら、早めにダッキングとヘッドスリップを教える。ガードだけでよけるな、と教える。つまり、ガードでよけなくてもいいような、相手のスピードや威力のないパンチはできるだけダッキングとヘッドスリップでよけさせる。そのかわり、ガードを高く上げさせない。
手の短い、体の堅い日本人選手がアゴの位置より高くガードを構えると、どうしても肩に力が入る。そのガードからはいいパンチが出せない。いいパンチとは、体のバネをいかした肩と腰と下半身の連動をともなうパンチだ。
ガードの弊害ということを考える。ガードを下げるのではない。ガードを高く上げすぎないということだ。そのかわり、ガードを構えたままの位置に固定するのでなく、相手のパンチしだいでグローブを動かしブロッキングをする。ジョー・メデルがそんなブロッキングをしていた、関光徳さん、ファイティング原田さんに対して。それは、肩に力を入れないために、ガード(ブロッキング)とボディワークを併用するということだ。
だから、中南米遠征から帰った矢尾板さんは永田耕造戦でガードをやや低く構えていた。弱打者が強打者に変身したのに驚いたが、その秘密はガードの変化にあったのではないか、と思う。
「虹の戦記」(私はこれがボクシングの本の中で一番好きだ)を再読して触発され、今日、ランディ・スイコの専属プロモーターである本田会長にランディのアメリカ遠征を頼んだ。できれば2、3試合。誰とでもやる。小林弘さんが強敵相手に4連敗しながら見事筋金が入ったように、ランディを痛い目にあわせてやろう。強打者やテクニシャンとの対戦の壁を乗り越えなくては、筋金が入らない。ちょうど今後のマッチメーキングについて考えていたときに、いい本を再読した。故中村会長に感謝したい気持だ(私がたしか29歳のとき、中村会長に左のはずし方についてアドバイスをもらい、それを「ボクシング・アラカルト」に書いたことがある)。
(5−4−05)
早起きして明日のスポーツ報知「ウィークリーBOXING」を書き、近藤さんにメール。相手側の都合で休載以外は1週も休みなく書いている。パナマ旋風のことを書いた。
11時すぎ車で成田空港へ。電車で行き、車中、本を読もうかとも思ったが、あまり本の虫になり本ばかり読んでいると、他の能力が退化する。英語にことわざがある。All work and no play makes Jack a dull boy(勉強ばっかりしているとバカになるよ)。自分で長い時間運転することもたまには必要だ。とてもいい天気で、成田まで100キロくらいで走っていると、運転が快適だった。カーブを曲がるとき、遠心力を感じ、尼崎の福知山線の事故を思い出した。
綾瀬のJBスポーツジム近くのホテルに比国人パートナーのロリー・ルナスをチェックインさせ、昨日着いているランディ・マングバットと一緒にランチ。君たち、3週間がんばって福島選手の練習をよくサポートしてほしい。綾瀬駅周辺のレストランやコンビニを見て歩き、彼らにアドバイス。
明日、JBでの彼らの初スパーを手配するため、また綾瀬に出てこなければいけない。考えてみれば、1日中、寝転がって本を読むとか、昼寝をするとか、普通の人のような休日がまったくない生活だ。土曜、日曜が仕事や試合でつぶれることが多い。小さな会社とはいえ一応社長なのだから、代休を取り休めばいいのだが、それができない。
いつか仕事が集中したとき、「これは楽しいと思いながら仕事をしないと、心身(精神と身体)がまいってしまうな」と考えたことがある。だから、楽しいと思って仕事をするようにしている。それにやはり私は体が丈夫なのだろう。仕事に邁進する気力も旺盛だ。だから、持っているのだろう。
「速報メール」会員のみなさん、連日、よくニュースが入ってくるな、と思いませんか。ときには疲れて大儀なときもある。そこで、楽しい、がんばろう、と自分に喝を入れて速報メールを送り続けているわけです。つまり、自分との闘い。ただし、真夜中まで仕事に忙殺され、その日速報が出せないことも2ヵ月に1度くらいはあるが。
今日、リング・ジャパン・クラブの月報である「ボクシング評論」連載の「ボクシングの本 渉猟記」に、「虹の戦記 中村信一・伝」の紹介を書ききった。一種の中村会長語録だが、立派な人だったな。その向上意欲の持続がすごかった。私も見習わなくてはいけない。
(5−3−05)
いま考えていることはこうだ。
(1) 体の反動を利用して、パンチを強く打つこと
これはロープの反動を利用して打つことではない。たとえば、ワンツーを打ったとき、右足をやや浮かす。その右足を横に踏み出す。この右足を踏むと同時に、体の反動を利用して左フックを打つ。これは、普通のワン・ツー・左フックより数段強く打てる。この踏み足が反動だ。これは応用がきく。以前、この「ひとりごと」で書いた、斜め前への踏み込みにも通じる。そして、この踏み変えは、なんば(常足)の動きにもなっている。
(2) 相手のブロックの上から打ってもダウンさせること
ブロックしているから、相手のパンチを殺せると思ったら間違いだ。たとえば、ちょっと右サイドに出て強烈な右フックを相手のブロックの上から打つ。相手はその勢いで体がくずれる。そこに、右のダブルを打ち込む。けたはずれのパンチ力があれば、この3連打すべてブロックの上からでも、ダウンがとれる。現にタイソンは相手のグローブの上から打っても、ダウンさせている。
(3) 打たせて打つこと
ボクシングの原則は「打たせずに打つこと」だ。その原則を反転する。相手の軽いパンチにまで過剰反応して防御する必要はない。ポイントで負けている。もうラウンドがない。そのとき、軽いパンチなら打たせてやる。その瞬間、一発で逆転KOする。相手に打たせるのだが、もろに食うのではない。必要最小限の体内スウェイ(スウェイバックを体内で行う)で相手のパンチの勢いを殺す。最終回になれば、相手は左を出したとき、右ガードは下がっている。軽い左ジャブ、あるいは遅い左フックなら、打たせて、すぐ左フックをもろに打ち込む。このパターンはいくつも応用例を作り出せる。
こんな新手をよく考えつくのは、中村信一会長・伝「虹の戦記」を読んだためだろうか。
(5−2−05)