相手の斜め前(死角)に出る方法を考えている。
これはボクシングで有用のみならず、街で大男の暴漢に襲われたとき咄嗟(とっさ)に相手の武器の可動範囲の外に出られる点で実用的である。
4月1日にレフェリー、ジャッジの出迎えのため大阪入りし、翌2日はダブル日本タイトルマッチ観戦のため帰京。日帰りできず、一泊後、大阪へ戻る。
その相手の斜め前に出る方法を考え、昔、矢尾板さんが坂本春夫をKOした場面を想い出したりしていた。大阪城公園駅で降りると、目の前に矢尾板さんがいた。
矢尾板さんは中南米遠征から帰って以来、以前のように大きなフットワークを使わなくなった。すり足でスッと最小限に動き、体重を乗せてパンチを打ち抜くようになった。その遠征後のフットワークは無駄がなく、実に効果的だった。
一緒に歩きながら、別に細かいテクニックの話はせず、矢尾板さんのクワテ・サンチェス戦(非常に素晴らしい試合だった)について2人で話した。いつも2人だけになると、私が古い試合のことを持ち出すので、こんな話になってしまう。
余談はさておき、まとめてみよう。
<相手の右、自分の左斜め前に出る方法>
これは簡単だ。オンガード・ポジションで両足が描く直線の方向に、斜め前に踏み出せばいい。
<相手の左、自分の右斜め前に出る方法>
これが問題だ。これを上手く滑らかに速くできると、相手の攻撃をはずせ、相手の死角から攻撃できる。
3つ方法がある。(もっと他の方法もあるのだろうが)。
1. クィックシフト
これは昔の選手のテクニックだが、右足と左足を入れ換える。つまり、相手のパンチが来る瞬間、右足を後に、左足を前にする。アリ・シャッフルをするようなつもりで、シフトして相手の斜め前に出る。相手はパンチを空振りした直後なので、右フックー左アッパー(左フック)がもろに当たる。
2.踵(きびす)を返す方法
これはレフェリーが左回りしていて急に右回りに方向を変えるときの足首のターンを真似る方法である。左の足首でキャンバスを蹴って、相手の斜め前(自分の右前)に出る。いわば、ヒール・ターン法である。現役のレフェリーでは、内田さんがこの足首のターンが上手い。
3.ヨーイドン法
オーソドックスに構えた姿勢から、急にちょっとだけ右手を上げ、自分の右斜め前に出る。まるで運動会のヨーイドン・スタートをする姿勢のように、右手を上げる瞬間、右斜め前に踏み出す。これでサイドへ出られる。そのうえ、右手を上げているので、振り向きざま、上から打ち下ろす右フックを決められる。ウソだと思うなら、このヨーイドン法をやってみるといい。右手を少し上げるのがミソだ。これで滑らかに右斜め前に出られる。人間の身体というのは、そう動くようにできている。踵(きびす)を返すのでなく、体の向きを変える。右手と右足を同時に斜め前に出すので、いわば、ナンバの動きである。
(4−3−05)