サイドステップについて考えている。
普通、左へサイドステップするとき、右足の蹴りでキャンバスとの間で作用反作用の法則により反力を生み出す。その反力へ左へ動く。
甲野善紀氏は左へ倒れこむような動きでそれより早く動ける方法があるという。確かに「古武術に学ぶ身体操法」(岩波書店)121頁の図のように動くと、速くサイドステップできる。
しかし、サイドステップの目的は単に相手のパンチをかわすだけでなく、すぐ、速く、強く相手を打つことだ。折角速くサイドステップしても、すぐ打てる姿勢でなければ、攻防一体の動き(の流れ)にはならないのではないか。
ジャブが来る。
右へサイドステップする(ヘッドスリップではない)。
何が当たるか?
右クロスから左アッパー(アゴ)がベストだ。
右クロスはアンダー・ザ・イヤー(耳の下の三半規管、つまり首筋の上)を狙う。これで前にのめらせ、左アッパーを突き上げる。
タイミングが合い、パンチがあれば、これだけで試合は終わる。
今度はジャブを急に左へサイドステップ(ヘッドスリップではない)。
相手にツーより速く、左フックをテンプル。右フックを鼻の下。
あるいは、右ショートをチョンと出し、アゴの先端へ。相手の右ガードが瞬間的に下がる。すぐ左フックをアゴ。
これで試合は終わる。
<サイドステップの要件>
1. 相手がパンチを出した瞬間にサイドへ動く。(相手がパンチを出さない状態で動くと、相手は向きを変え攻めてくる)
2. 肩の力を抜いておく(すぐ強いパンチをうつため)。
3. サイドへ動いた反動で、パンチを出す。
4. 至近距離でサイドステップする。(相手から離れてサイドへうごいても意味がない、効果が薄い)。
5. 相手の反応速度に対応してサイドステップする。(ベクトル的に、最も次のパンチが効果的に当たる位置に身体を持っていく)。
ひとついい手を思いついた。歩きながら、いつもサイドステップのことを考えているから、ひとつくらいアイデアが浮かぶ。
それは秘密だ。実験して成功してから開示しよう。
(3−30−05)
「ボクシング評論」に「わが想い出の名ボクサーたち」という連載をしている。それをオサムジムの渡辺会長にいったとき、「俺を書いてくれ」といわれた。こういう挑戦には応じる。今日、朝から携帯を切り、Eメールも見ず、1日中、昔の専門誌を読み返しながら、過去の追憶をたどった。いいものが書けたと思う。ボクシングを見始めた自分の少年時代を想い出し、懐かしい気がした。
(3−27−05)
いままで、ステップインはつま先から入るのが基本だ、と思っていた。かかとから入ると、次につま先をペタッと下ろさねばならず、2段階になる。それでは速い踏み込みにならないためだ。
甲野善紀氏の講演を聴き、その本を2冊読んで、考え出した。
宮本武蔵は「五輪書」で、「つま先を少し浮かすようにしてかかとを強く踏め」と説く。
かかとからステップインすることにも効果がある。その効果とは、ヒザを柔らかく折れることだ。自分で何度もやってみた。ワンツーのワンをかかとから入ると、前のヒザが(つま先から入るより)柔らかく折れる。ツーを出すとき、腰が落とせる。
ただし、ジャブだけを突いて動くとき、前ヒザをそれほど折る必要はない。この場合は、従来通り、つま先から入っていい。
こんな使い分けはどうだろう。
軽くて速いパンチを打つときは、つま先からステップインする。
ウェイトを乗せ強いパンチを打つときは、かかとからステップインする。
これまで、アルゲリョやコンスタンチン・チューのような名選手でも、かかとからステップインする例を見た。「あんな名選手たちでも、かかとから入る悪い癖があるのか」と思っていた。そこに、かかとから入る効果があったことが少しは分かった。
かかとから入るといっても、つま先を高く上げて入るのではない。傍目(はため)から見たら、つま先から入ったのか、かかとから入ったのか分からないくらい、キャンバスと水平にスッとステップインする。しかし、かかとを先にキャンバスに接し、それからつま先を踏む。そうすると、ヒザが柔らかく折れる。なるほど。
考えてみれば、人間の身体というのは、「かかと−つま先―ヒザ」とリンクでつながっている。かかとから入ることの効果になぜ気づかなかったのだろう。先輩に教えられたボクシングのセオリーによる先入観のせいだ。
最近、散歩のとき、かかとから入りつま先で送る歩き方と、つま先で入りつま先で送る歩き方を、交互に試している。つま先だけでかかとをつけずに歩くと、ふくらはぎが硬くなる(そのかわり、踏み込みは速い)。しっかり、かかとから入り、つま先で地面を押すと、より大幅で速く歩けるような気がする。
甲野氏は、ナンバ歩きをすると、普通の身体をひねる(うねり系の動きをする)より疲れが少ないという。しかし、私はナンバ歩きになれないためか、ナンバで歩いた方が疲れる。
このごろ、これまで考えても見なかった「足の裏」の地面につけ方を考えている。ボクシングのサイドステップに応用するためだ。
(3−25−05)
あまり次から次へいろんなことが起こるので、できるだけ今日この日に何か書きとめておこう。執筆や読書や習字に熱中すると、「ひとりごと」どころではなくなるのだが。
今日は、後楽園ホールまで2往復。午後2時の鈴木、デラトーレの計量のため一度水道橋まで出る。事務所に出て、仕事を片付け、また水道橋へ。夜は、ピーターが高橋を3回でTKOし、OPBF王座防衛。試合直後、渡辺二郎氏と安達会長とホールで会い、談笑。
JRで片道30分だから、2往復で2時間。ずっと、甲野善紀氏の本を読んでいた。「身体から革命を起こす」を読み終わり、次に2冊目の「古武術に学ぶ身体操法」に入った。
別に心酔しているわけではないが、なかなか参考になることが書いてある。2冊目の今日読んだところに厳しい言葉があった。「既存理論をそのまま使って指導するような、探究心のないコーチのやり方は、車に喩(たと)えれば、いわば中古車である」と。
21日(月)の講演会で見た、甲野氏が桑田投手に教えたという素早い牽制球モーションを家で何度もやってみた。1−2−3と分解した動きで牽制球を投げるのでなく、一瞬のうちに180度向きを変え投球モーションに入れる。私でもすぐできたのだから、このヒザを抜くという方法には一理あるのだろう。
問題は、どの技がどのようにボクシングに生かせるかだ。
ナンバというのは、右足を出したとき右上半身を入れる動きだ。これはもうボクシングで一部応用されている。中村ジムの選手(矢尾板貞雄さん、小林弘さん)の左フックは左足を斜め前に出しながら、左フックを打っていた。右を打つとき、右足を出す方法もある。このステップイン・左フックで、矢尾板さんは坂本春夫をKOした。
うねり(とこの本で書く)のは、ボクシングの指導法でいう身体のひねりだ。身体のひねりの動作をやめ、確かに左体側、右体側で動くと、速く動ける動作もある。しかし、ひねり(身体、腰の回転)を省いて速く動けても、パワーのあるパンチを出せないのではないか。ここいらがよく分からない。
肩を抜くとは、肩の力を抜き(脱力状態にし)、滑らかな動きを生み出す方法だろう。ボクシングの場合、肩越しのパンチが飛んでくるのだから、極端に肩を落とすのは、自分が滑らかに速く動けるとしても、防御面で危険なのでは・・・。
甲野善紀という人はつねに新しい技を編み出し続けるという。いわば「創作武術」だ。私は別にこの人の古武術を学ぶ必要はないのではないか。その古武術を学ぶ、真似るのに習熟の時間を要し、それをボクシングに応用する研究、工夫にまた時間を要する。そんな悠長なことはしておれない。ランディ・スイコは今年か来年に世界戦の機会があるかもしれないのだから。私が習得して、それをランディに伝達するのにまた時間がかかる。
私自身が甲野善紀になればいいのだ。自分で東洋人ボクサー向きのテクニック、タイミングを編み出せばいいのだろう。アメリカやメキシコのボクシングをそのまま模倣することには限界がある。こちらは身体のバネ、上半身の力、腕力、リーチの長さで劣るのだから。
甲野氏の講習会などに行くのは(誘惑はあるが)やめよう。病み付きになりそうだ(私は結構こんなコツやポイントや神髄といったものが好きだから)。そうでなく、新しいワザを生み出す精神を学び、自分で東洋人ボクサー向けの新技術を生み出せばいい話だ。いい刺激になった。明日もJRの中で、2冊目の残りを読む。家でその動きを試してみよう。
(3−23−05)
6時に起き、比国のプロモーター、ワキー・サルードを車で成田空港まで送りに行った。ワキーはセブの大立者で、4−27のランディ・スイコ対ムアンファレックのOPBFタイトルマッチの興行をしてくれる比国での私のパートナーだ。友人のためには、自己犠牲を払わねばならない。
11時前に成田空港に着き、ワキーとコーヒーを飲みながら、東洋のボクシング界を盛り上げるため、もっとお互い努力しよう、と約束した。
12時にWOWOW入り。予定より1時間早く着いた。
今日は、3−27放送のラリオスvs.マッカラー、サラテvs.シドレンコ戦の解説。
音入れが終わってスタジオから出ると、大村プロデューサーの携帯にスポーツ報知の近藤さんより「ジョーさんの明日掲載の原稿が入っていない」と連絡があったという。昨夜、入れたはずなのに。PCを空けてみると、昨夜急いで仕事を終え早く寝ようとしたため、「WEEKLY BOXING」のグループ送信と「WAKEE SALUD」のそれと間違って送っていた。ワキーは帰国して文字化けした原稿を受信して戸惑うことだろう。
空港への道のりは、家内が運転していて、後の席でパソコンでニュースをチェックしていた。成田からWOWOWは私が運転。WOWOWに入ってから1時間、またパソコンで仕事をしていたのでバッテリーが切れた。アンラッキーなことに専用バッテリーを持って来ていない(解説資料を鞄に入れたため、重くなるのでバッテリーを家に置いてきた)。
WOWOWで東芝の専用バッテリーを探してもらったが、マックやVAIOを使っている人はいても、dynabook使用者が見つからず、どうしようかと思った。原稿自体は出来上がっているのに・・・。あきらめる寸前、大村さんがそれを手配してくれた。やっと送信。
6時半から某スタッフの送別会。詳細は3−27のエキサイトマッチをご覧ください。
大村さんに自宅まで車で送ってもらった(私の車は家内が乗って帰った)。車中、昨日講演会で見た甲野善紀体験を詳細に話した。50代の男が20代の若者より瞬間的に素早く動ける技に感心した話を延々とし、それのボクシングへの応用について話し合った。
ボクシング、そしてWOWOWエキサイトマッチを盛り上げるには、というテーマで話し合う。私は「ボクシングの科学的分析コーナー」を作ることを提言。大村さんは考慮する、と約束してくれた。
「ボクシング評論」の「トレーニングの科学」の部分をもっとビジュアルにボクシングに当てはめることが出来たら・・・「ボクシングは科学だ」のミニチュア版ができるのだが・・・。
(3−22−05)
先日、週刊新潮をめくっていたら、最近話題になっている本「身体から革命を起こす」の著者、甲野善紀という武道家の講演会がある、と書いていた。それを事前に申し込み、家内と一緒に新宿の紀伊国屋ホールへ行った。途中、車が混み、私は降りてJRで行った。私は15分前に着き、車で来た家内は遅れて入ってきた。
開演前、質問票があり、こう書いた。
「身体の硬い東洋人ボクサーが身体の柔軟な黒人ボクサーなどのスピード、リズムと対抗し、的確に、かつ強くパンチを打ち込めるヒントがあれば、ご教示願いたい」と。
講演後、この質問に対して答えていただけるか、と期待したが、時間が限定されていたせいか、テーマが抽象的だったせいか、甲野氏からの回答はなかった。
しかし、非常におもしろいものを見せてもらった。武道家の身体の動かし方に大いに興味を持った。
この人は、その著書にこう書く。
「スポーツの上達のためには、ウェイト・トレーニングをやって筋肉を鍛えてという非常につまらない状況にしてしまったのは、科学の罪です。(中略)筋トレして筋肉を太く大きくすると、かえって肉離れとか不具合がおきてくることが多いわけです。人間の身体というのは、ただ太く大きくするよりも、全体としてバランスを取っている方がいい」
私が考えてみようと思ったのは、
(1) 確かに、かかと、ヒザ、腰の使い方で身体全体の大きな力が出せそうだ、と分かったような気がする。
(2) しかし、ボクシングのような連続的、リズミカルな周期的繰り返し運動の中で、大きな力(いわゆるパンチ力)を発揮するには、それをどう応用すればいいのか。
(3) 相手の打撃を耐えるには、腹筋、首などの被打撃耐久力を鍛えねばならない。負荷トレーニングは害になるのか。身体バランスを損なわずウェイト・トレーニングをする方法があるのではないか。
講演後、甲野氏はサイン会をしていたが、側の著書(非常に多い)の中から「古武術に学ぶ身体操法」を求めた。この2冊をよく勉強し、ボクシングへのヒントをさぐってみたい。
レブ・サンティリャンのマネジャーで、比国セブのプロモーター、ワキー氏をホテルに訪ね、3人で築地の寿司屋に行った。帰途、銀座で車を止め、鳩居堂で愛用の便箋と封筒を買った。書道の徳村先生に手紙を書かねばならない。
WBCのスーパーフェザー級ランキングを見ると、
チャンピオン マルコ・アントニオ・バレラ
1位 エリック・モラレス
2位 ムゾンケ・ファナ(4−9にバレラに挑戦)
3位 マニー・パッキャオ
4位 ランディ・スイコ(私の選手)
5位 カルロス・エルナンデス(6位チャベスと5月に対戦)
6位 ヘスス・チャベス
この中で一番実力がないのはスイコだろう。ここ1年で他の強豪に勝てる武器を磨くため、どんなトレーニングをすればいいのだろう。それを模索している。そのために、今日聴いた講演の一部が使えるかもしれない。それを研究してみよう。私にとっては切実な問題だ。
今日、ジョフレの試合を20くらいを見たが、一撃で相手を倒した過去の例(デュラン対デヘスス第3戦、レナード対グリーン、ロビンソン対フルマー、ハーンズ対デュランなど)を見直してみたい。できれば、ランディに自分でKOテキスト集を編集して作ってやろう。
(3−21−05)