ジョー小泉のひとりごと 2003年8月前半


日本人選手育成の方向性について

将来、世界チャンピオンを作るため、日本人選手をどんなタイプに育成すべきか?

1. まず敏捷なボクシングをすることが必要。
<理由>
パワーで中南米に劣り、スピードでアメリカの黒人選手、メキシコ系米国人(チカノ)に劣る傾向があるなら、打ち終わったらすぐポジションを変え、ショートの速いワンツーを打ち込むような敏捷なタイプを作る必要があるのではないか。

2. 防御をもっと重視したトレーニングをする。
<理由>
日本人選手同士では互いに一発の強打がないため、手数と頑張り(打たれたときの我慢)で競い合っているが、相手が強打者の場合、こんな打ちつ打たれつのボクシングは通用しないだろう。

体のバネをきかしたパワーで中南米選手に劣るなら、もっとガードを強化し、そのうえでフットワーク、ウィービング、ダッキング、ヘッドスリップの練習をさせねばならない。

3. 手数も大事だが、決め手のパンチを磨く。
<理由>
日本人選手のタイプは伝統的に連打型だ。一発で倒すようなタイプは非常に少ない。肩の力を抜き、軽い連打、コンビネーション・ブローで勝負するタイプが主流だ。しかし、それでは世界のトップに太刀打ちできなくなっている。その連打型の選手にもっと決め手のパンチを磨かせ、せめて相手のパワー10に対し7くらいのパワーのあるパンチを出したい。

4. ボディ打ちと相手のボディ攻撃に対する防御を。
<理由>
日本人選手は総じて決してボディ攻撃が上手くない。上下の打ち分けをもっと鍛えねばならない。

たとえば、私がたまたま見たラファエル・マルケスの練習では、
ワン、ツー、左アッパー(ボディ)、左フック(顔面)、左アッパー(ボディ)
あるいは
ワン、ツー、左フック(顔面)、左アッパー(ボディ)、左フック(顔面)
の単純なコンビネーションをシャドー、ドラ型ミットで繰り返していた。

この最後の5つ目の左アッパー(ボディ)、あるいは左フック(顔面)が非常に強い。
日本人選手の上下の打ち分けというと、ボディは軽く当てているだけで、途中強く打つとコンビネーションのリズムが途切れ、あとが続かなくなる。連打するとき、腰の回転は甘い。

そうでなく、コンビネーションの途中に強いボディブローを混ぜて連打する練習が必要だ。
さらに、お互いボディブローはそれほど強くないから無造作に打たせ、我慢することで防御の代用にしている。こんなボクシング(防御)でメキシコのボディパンチャーと対戦すると、ボディ攻撃でダメージを受ける。

ヒジを素早く動かすエルボーブロック、相手のボディ攻撃に対するサイドステップでもっとボディブローに対するディフェンスを磨く必要がある。

5. ジャブのスピードアップ強化。
<理由>
速いジャブ、強いジャブ(左ストレート)、ダブル・トリプルのジャブ、肩の位置を変えたジャブ、フェイントをかけてジャブ。ジャブをもっとバリエーションをつけて出す練習をする必要がある。

世界的にジャブが採点において重きをおかれる現状から、もっとジャブを重視した練習が必要。日本の採点もジャブで支配したラウンドにポイントを与える意識改革が望まれる。

日本人選手は走り込みにおいて熱心でスタミナはある。それを生かしたうえで、もっとテクニック・アップ、スピード・アップ、パワー・アップを心がければ、世界のトップと太刀打ちできる選手を育成できるはずだ。

最近、日本人選手の育成の方向がちょっとずれてきているのでは、と危惧するので、私は以上のように独り言を漏らした。
(8−10−03)


メキシカン・ボクサー対策

パンチの重いメキシコの強打者と対戦するときの対策は?

<勝つための道具>
相手より速いジャブ、速いワンツー、速いフットワーク、速くて強いカウンター(右ショート、または左ショートフック)をとるタイミング、フルラウンド動き回ってラストまで動き、パンチのスピードが落ちないだけのスタミナ、強打者を相手に中間距離で戦う勝負度胸

<具体的対策>
まず速いジャブで出鼻を叩く。右クロスを合わせられないよう、フェイントをかけてジャブを打ち、ダブル、トリプルでジャブを打つ練習を積んでおく。グローブの上からでもいいから、左ジャブをつにに先に、相手より数多く打つ。

ジャブの相打ちでは必ずより正確にヒットして打ち勝つ。左ジャブを打つときの、右グローブの位置に変化をつける。ジャブの相打ちのタイミング練習。

相手はワンツーから次の左フック(または左アッパー、ボディ)を強く打とうとタメを作る。その左フック(または左アッパー)より先にインサイドから、より速いワンツーを当てる。当てたら、すぐ左サイドに動く。

もちろん、ガードは大事だが、できるだけブロックせず、ダッキング、ヘッドスリップで空振りさせ、相手の体力を消耗させる。相手のミスブローを誘うため、至近距離で左右に動き、ダッキング、ウィービング、ヘッドスリップする練習を積む。

相手があせって大振りになってきたら、相手の大きい右に対して右ショート、相手の大きい左フックに対して左フック、をカウンター。

当然、相手は動きの速いこちらのボディを狙ってくる。できるだけエルボーブロックでなく、フットワークでボディブローの距離をはずす。メキシカンのボディ攻撃は執拗だから。

相手が出てこなければ、先にジャブを当てる。相手が打ってきたら、タイミングが合うときは右ショートか、左フックでカウンターをとる。

相手が大振りのパンチを空振りしたら、すぐショートのワンツーをヒットする。ただし、それを狙うために待たない。守勢にならない。

相手の左ジャブによるボディ打ちを殺す。こちらは、ワン(上)からツー(ボディ)を決める。メキシカンには右ストレート(ボディ)が当たる。

ロープを背負わず、リング中央で戦う。

つねにポイントを先行し、相手をあせらせ、大振り、強振を誘う。正確なカウンターをとる練習を積む。

<この対策で勝てる選手>
スピードと勘に欠けるホセ・アントニオ・アギーレ、パンチは強いが体のかたいラファエル・マルケスには勝てる。

矢尾板貞雄のフットワーク、小林弘のカウンターがあれば、相手のパワーを殺せる。

しかし、スピードもテクニックもあるマルコ・アントニオ・バレラ、ファン・マヌエル・マルケスに対して勝つには、他の道具が要る。それは相手に優るパンチのパワーだろう。
(8−9−03)


「速報メール」無料サービス月間 (8月31日まで)

「速報メール」のアイデアは私が言いだした。
みんながつねにパソコンを四六時中、持ち歩くわけではない。
仕事中、パソコンを使っている人もボクシングのサイトにアクセスできるわけではない。

「そうだ、携帯だ」と考えた。
携帯にメールで試合の速報が入れば、外に出ていても試合結果を知ることができる。

パソコンに強いT君がシステムを作ってくれた。
野球の途中経過を掲示するサイトがあり、それに携帯からアクセスできると聞いた。
それは本人がアクセスしなければいけない。
そうではなくて、試合結果がまるで友達からのメールのように入ってくれば、面白い。

当初、私はこの「速報メール」に熱中して試合のリポートを長く書きすぎていた。
だから、携帯で受ける人は、途中でリポートが切れたりした。
ところが、いまや文字数の設定変更で2000字もメールを受けられる。

携帯は、いまやパソコンであり、カメラであり、近い将来TVになる。
夜9時半ごろ、後楽園ホールで試合が終わる。
最近はホールの自分の席で速報を打ち流してから帰る。
だから、このごろ「速報メール」が速くなった。

以前は駐車場でパソコンを打ち、それから流していたので試合の30分後くらいして速報を出していた。いまは、メイン終了の15分後には速報を出す。

携帯だけでなくパソコンでもこの速報は受けられる。
速報の速いサイトもあるだろうが、自分でそのサイトにアクセスしなければいけない。
しかし、リング・ジャパンの「速報メール」はたとえば夜10時前(ニュースステーションの始まる前)に自分のE−MAILを開けば、速報が入っている。

この「速報メール」は画期的だ、と思う。
目標は1万人だ。
目標が高いから単価を1ヵ月200円とした。
ほぼ毎日、ボクシングの情報が携帯や自分のPCに入り、1通のメール単価は10円以下。

マガジンやワールドにも広告を出した。
リング・ジャパンのHPにも広告を継続している。

いま新聞では(スポーツ新聞でさえ)、ボクシングの記事が小さい。
普通のカードでは結果だけしか載らない。
毎月、日本各地でこれだけ数多くの興行があるのに。

だから、RJクラブ会報の各地通信員の助力を得て「速報メール」を実行している。
まだ向上の余地はあるが、システムはほぼ軌道に乗った、と思う。

「速報メール」はどんなものか知ってもらうため、また無料お試し月間を設ける。
8月一杯は無料。

(1)名前
(2)携帯か、パソコンかの区別
(3)受信メールアドレス 
だけを

order@ring-japan.com

まで申し込んでいただければ8月中、無料サービスを受けられる。
その効果を体験し、9月から月200円の有料会員になっていただきたい。
(8−7−03)


メキシコで考えたこと

8月1日(金)、メキシコでWBCフェザー級暫定王座決定戦の入札がキャンセルになったあと、午後、ナチョ・ベリスタインのヒルベルト・ローマン・イ・ダニエル・サラゴサ・ジムへ寄った。西出健一氏に道案内を頼み、そのジムに着いた。

8月16日にデリック・ゲイナーと統一戦をするファン・マヌエル・マルケスが練習をしていた。それと入れ替わりに弟のこれも世界王者ラファエル・マルケス(オースティンにTKO勝ち)が練習に来たので、そのトレーニングも見た。屋上にジムがあり、天井はプラスティックで覆っているので、まるで温室の中にいるように暑い。ボクサーにとっては汗がよく出るのでいい、と思われるかもしれないが、ジム内の温度は長くいると頭がボーっとするくらい高い。

ファン・マヌエルは思ったより小柄で、身長は170センチないように見えた。大試合の2週間前なので、体はよく絞れ、スピードがあり、パンチも切れているように見えた。ただし、ファン・マヌエルは楽に構えるためか、脇がかなり甘く見えた。彼の勝機は、踏み込み、ボディ攻撃、左フックにあるだろう。それが出れば、ゲイナーとの身長差を克服できるだろう。

弟ラファエルは顔が小さく、胸が厚く、腕が太くて長い。非常に体の大きなバンタム級だ。シャドーのとき、メキシカンがよく使うドラ型のミットをリング中央に置く。それを中心に、コンビネーションを打っては左に回る。そのシャドーが、日本なら「お前リキみすぎだ。もっと肩の力を抜けよ」といわれるくらい、力が入り、ぎこちない。ところが、ミットを打ち出すと、出すパンチは実に重い。フォロースルー(打ち抜き)を効かしているので、連打の回転は遅いが、どのパンチも強い。

このジムの選手は子供も成人もあまりシャドーボクシングがきれいではない。ただし、ナックルの返しがいい。ラファエルの練習を終りまで見ていればよかったが、ジムの暑さに閉口してナチョに挨拶をして出た。

ナチョとは長い付き合いだ。対戦歴では負けている。
ヒルベルト・ローマン 判定 渡辺二郎(私はカットマン)
ローマン 判定 畑中(マッチメーカー)
サラゴサ 判定 畑中(マッチメーカー)
ラバナレス TKO 辰吉(コーディネーター)
辰吉 判定 ラバナレス(コーディネーター)
辺丁一 判定 ラバナレス(マッチメーカー)韓国
2勝4敗。
試合前、いろいろ世話をしたことがあり、いつも訊かれる。
「いまどんな選手を持っているんだ? なぜトレーナーをしないんだ?」と。私はあなたのように持続的にトレーナーをする元気がもうない。ナチョはサルディバルのアシスタント・セコンド、オリンピック・チームのコーチ、サラゴサを連れてのプロ転向と、つねに成功してきた。その実績に敬意を払いたい。

西出さんと話した。
メキシコにトレーニングに来て、効果のあった選手もいたが、そうでない例もあった、という。

それは、メキシコの水準に高さに関連する。ジムの端で下手なシャドーをしている選手たちが、アマチュアで数10戦も経験している場合がある。彼らはWBCランキングどころか、メキシコ・ランキングにも入っていない。しかし、メキシコにトレーニングに来た日本の一流選手よりスパーリングでは強い。

総じて、日本の選手は防御といえばガード主体で、決してディフェンスはよくない。だから、いろんな選手とスパーリングをすると、自分のパンチは当たらず、相手のパンチは重い上、それをよく食う。総じて、メキシカンのボクサーたちは手が長く、体力がある。至近距離での打ち合いに強い。特に左フックは、みんなドラ型ミットでフォロースルーを効かす訓練を積んでいるので、重くて強い。日本人選手はブロックしたのに体を浮かされるほど左フックが強い。

日本チャンピオンや世界ランカーがメキシコのプロ入り前の少年や戦績のよくない中堅選手にさえ連日、打ちまくられれば、自信を喪失する。自分のボクシングに迷いが出る。その精神的挫折を味わって帰国する。帰国後、どうも調子がよくない。何のために高い金を使ってメキシコへ遠征したのか分からなくなる。

メキシコでレベルの高い選手たちとガンガン、スパーをして効果をあげて帰る選手もいるが、多くは上の例のようにメキシコで挫折を経験する。

その一因は、日本の選手たちのアマチュア経験の乏しさだろう。子供のころからアマチュアでもまれ、基礎がしっかりしているメキシカンと比べ、プロのジムに入門してからボクシングを習い始め、すぐ新人王戦で前に出て手数を出す練習ばかり積んで日本の上位にあがってきた日本人選手とは、キャリアが違う。テクニックが違う。メキシカンはいろんなフェイントの技術を知っているので、それにたやすく引っかかり、打ち込まれる。日本では馬力と手数で鳴らしている日本人選手が、その馬力と手数でスパーでは打ち負ける。

選手ひとりでメキシコへ練習にいかせるのは考えた方がいい(選手のタイプにもよるが)。トレーナーかマネジャーが同行し、スパーリングの相手、程度をチェックした方がいい。折角メキシコに来たのだから、1ラウンドでも余計にスパーをして帰ろうと、劣勢のスパーばかり繰り返していると、自分のボクシングが変形してしまう危険性がある。

現在、メキシコ国内のボクシングは興行数が減り、落ち目だという。しかし、それはアメリカの有力プロモーターたちが有望選手をプロモート契約で引き抜くからで、世界ランキング上位を見ると、いかにメキシカンが多いことか。

マルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケス、ラファエル・マルケス、ホセ・アントニオ・アギーレ、ホルヘ・アルセ、オスカー・ラリオス、エドガー・カルデナス、ビクトル・ブルゴス、フェルナンド・モンティエル、アントニオ・マルガリータ、ヘスス・チャベス、ホセ・ルイス・カスティージョ・・・。

彼らには、ビセンテ・サルディバル、ルーベン・オリバレス、カルロス・サラテ、フリオ・セサール・チャベス、リカルド・ロペスと続く強豪の歴史を背負っている。メキシカンの強さは実力伯仲の同国人対決を何度も経た筋金入りだ。アマチュア、プロと経験を積んだ若者たちが明日を夢見て厳しいトレーニングをしている。

決して日本のトレーニングが甘いなどというつもりはないが、選手育成のシステムは違うような気がする。基本の差があるように感じる。日本のように新人王戦で目先の勝利のため防御を軽視して前に出て手数を出す練習ばかりしていては、肝心のバランス、フットワーク、ディフェンスの基礎固めが損なわれる面があるのではないか。そして、ボクサーとして試練を課すべきときにタイの格下選手とばかり組み合わせ楽勝させていては、選手が伸びない。

かといって、メキシカンに降参していては、日本のボクシングが成り立たない。そんなメキシカンに勝てる工夫、戦術、訓練を考えなければいけないのだが・・・。
(8−6−03)


メキシコから帰国

木曜の午後2時に成田から飛び、日曜の午後2時半に帰国。
ロス経由のメキシコは、木曜の午後5時に着き、土曜の朝7時に出たので
正味2日弱の滞在だった。

入札の内容は毎週、水曜掲載のスポーツ報知「ウィークリーBOXING」に
書く予定。

メキシコは滞在した2日間とも雨だった。
帰国して成田空港に降りたとき、その暑さに驚いた。メキシコより熱い。
到着した時刻に、第2空港では、レアル・マドリードのベッカムの来日を
待つファンで大混雑だったらしい。第1に到着でよかった。

メキシコでナチョ・ベリスタインのロマンサ・ジムに寄り、ナチョと旧交を
温めた。メキシコで感じたことがある。
それは次の「ひとりごと」で書きたい。
(8−4−03)